人と触れ合うことで何かを見つけようと

自分なりの答えを見つけようと



オレは何になれるのだろう?

オレには何が出来るだろう?




全ての答えは此処に有る―――




















act 3 : 「輝」






























「三蔵うぅ……腹減ったあああ〜!!」

「あ・・あちい・・・まじで死ぬ……。ああ…向こう岸でセクシーな美女が俺に……ぶつぶつ」

「うるせぇ……」





煩悩渦巻くジープの中で、はその元凶である二匹の煩悩人の間に挟まれる形でそこに居た。

暑苦しい男の中に更に男が加わる事で、更なる不協和音を醸し出している……筈なのだが、何故か間に居る少年はとても

涼し気な顔で座っている。



あれから。

の発言があり、三蔵は銃を下ろした。




――殺してくれ




印象深い一言であった。

という存在は、この四人にだけでなく、普通の人間や桃源郷全土に渡り脅威と成り得る。

しかしながら、少年の願いが自分の命をも惜しまないものであると知り、三蔵自身も手を下す事を躊躇したのだった。

現在では、の「やらなくてはならない事」が済むまで、自分たち(主に三蔵)の眼下で行動をするという条件で、こうして共にジープ内に

居る訳だ。

この場合、「一人より五人で」という大雑把な立案でもあったが、間違っていないからそこは良しなのである。

まぁ、そうとは口で言ってみても、実際のところ「自分たちが少しでも楽が出来る為に…」と言う不謹慎な考えが四人にはあったりする。

つまり「いつでも殺せる状態に」なんて言うのはただの名目であるようなもので、三蔵以外の三人は、そのうち三蔵も考えを改めてくれる

だろうと言う目論みがあったりするのだ。


そんな中のの心中は、どこか複雑なものであった。

喚く二人に挟まれ、一人静かに目を閉じ、思いに耽る。

人の中に自分がいるのだと思うと、は少し妙な気分になっていた。

そして、もまた、あの時自分が三蔵に言った言葉を思い出している。





『殺してくれて構わねぇ。殺してくれ』










――殺してくれなんて、酷く人任せな言葉だ。

玄奘三蔵法師

その名を聞けば解る。

お前もオレと同じく、妖怪に追われる身なんだろう?

だからオレを殺そうとしたのだろうか。

お前も、本当は殺してほしいと思っていたのだろうか。


否……ちょっと考え過ぎだ。


こんな事、一旦忘れよう。

忘れて………















――あれは 一体 どの位前の事だろう



―――オレが強くなろうと決めたあの日は



















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「………っ!!!」

「……んあぁ!?」

「んあぁ!?じゃねーっての!!」

「(だ……誰だこいつ!?………あぁ、悟浄だっけか)」


、街に着きましたよ」

「(八戒……な)」


「さっさと起きろ!!」

「(………玄奘)」


ーー!ハラ減ったから早く行こーぜ!!」

「(……悟空・・) あ……悟浄わりぃ…!」




昨日の妖怪退治に加え、昨夜は一睡もしていなかった事から、は非常に疲れていた。

どうやら、ジープの心地良い揺れに誘われ、いつの間にか悟浄に寄りかかったまま眠ってしまった様だ。




「ったく…お前が年上の綺麗なお姉さんだったら、いい気分だったのによ……。よりによって、男!ガキ!かよ…」

「……悪かった」


「なーんてなっ。ま、気にすんな。ただし、今日だけぜ?」

「お、おう…」


「さぁ、も起きたことですし、参りましょうか」

「やっり〜!めしめしぃ〜〜♪」




街の中を散策し、食事場所を見つけた三蔵たちは、早速店内に入る。

丁度時間は、昼時。

賑わう飯店内は外よりも忙しなく、また、目まぐるしく見る者の世界を変えていた。

食器がガシャガシャと鳴る厨房から、活気の良さそうな一人の中年女性が出てくると、五人に「いらっしゃい」と挨拶をし、品書き

をテーブルに置いていった。



、遠慮しないで頼んで下さいね。」

「…お、おう」




返事はしたもののメニューに目を通そうともしないを一瞥した三蔵が、何やら企んだような表情で口を開いた。




「おい」

「?」




なんだよ?という様な顔をしたに対し、三蔵は少し身を乗り出して続ける。




「食う時くらい、その花粉予防マスクみたいなもん外したらどうだ」




言われてみればそうである。花粉予防マスクの下りではなくだ。

と彼らはまだ出逢って間もないのだが、対面した時から、その大きな口当てのせいで、の顔は半分以上隠れている。

そのため、この少年が本当はどんな人なのかを、まだ彼らは知らなかった。

隠されれば気になるというのが人の性というものである。口当ての上から知る限りの少年の顔は、布上から描かれる輪郭からしても、端正

であろう事が容易に想像出来た。

そんな事を考えてしまうと、ますます確認したくなるというものだ。

それは此処にいる三蔵、悟空、悟浄、八戒に然り。なかなか躊躇するを見て、悟浄が両手を掲げ少年を羽交い絞めにするポーズをとら

んとすると同時に、は席から勢いよく立ち上がった。

ガタンッと音を立てて動いた椅子に、周囲がちょっとだけ驚いた。




「どうした、。便所か?」

「いや。ちょっとオレ……用事思い出したから行くわ。飯はお前らだけで食ってくれ」




今だ手を引っ込めない悟浄が問い掛けると、はそう言って、逃げるように店から出て行ってしまった。




「なんだか妙な様子で行ってしまいましたねぇ。用事と言っていましたけど……」

「……嘘を吐くならもっとまともな嘘吐きやがれ。ガキか。」

「俺たちが凝視し過ぎたからじゃねぇか……?」


「悟浄が変な事をしようとしたからでしょう?(苦笑)」

「いやいや、八戒。隠されたら気になるだろ、フツー。もしかしてあいつ…髭が濃過ぎて悩んでるんじゃ……」

の髭面!?あははっ考えらんねぇ〜」


「僕は、女性みたいな顔つきが気になるからだと思っていましたけど。ほら、くらいの年齢だと、丁度気にする年頃じゃないですか?」

「ああ、確かに。あいつそんな感じだな」

「……お前ら、ごちゃごちゃ言ってねぇでとっとと食え」



その三蔵の一言で一旦の話は打ち切られたが、やはりその事が気になったのか、悟空の食べる音以外はしていなかったとかなんとか…。























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「なんか、変な嘘吐いて出てきちまったよなぁ、オレ」



途方に暮れるは、そんな独り言を呟きながら街中を歩いていた。




「自分の顔……か」




からすると、自分の顔の部位で悩んでいる事など特に無い。というよりも、いちいちそんな事を気にする様な性格でないからだ。

ただ、出来る事なら、この忌まわしい目を隠してしまいたいと思っているが、そんな訳にもいかない訳だ。

この口当てで己を囲う理由。

それは、自分が女である事を隠したいが為の悪足掻きの様なものである。

そう。

は女だった。

自分が自分である事の否定はしないし、勿論、女である事もそうである。

しかし、これには彼なりの思いがあるのだ。









――あなた、やっぱり女の子だったのね


――オレは、お前が何者であっても構わない。オレはオレ自身が見たものを信じるだけだ











ああ、つい思い出してしまったと、少年は自分の帽子を引っ張り目を覆った。

一言で言えば、これは忠誠心だ。そして、それを自ら拘束する為の錠であるのだ。

自分が妖怪に狙われる上で、女という性は言葉にし難いリスクを伴ったが、今やそんなもの関係ない。

それもこれも、生きる選択を自分に与えてくれたオプションであったからだ。


周囲を暫くきょろきょろしたは、ポケットにちょっと手を突っ込むと、とある店へと入っていった。






















街を歩く少年は、一方で噂の的と成る。

当時の八戒や悟浄がを見て感じた様に、通り過ぎる人々もまた、少年に目を惹かれていたのだ。

全身白を纏い、瞳が血の様に赤く、隠された表情が妙な何かを誘う妖艶な少年。

少年独特の危うさ、無邪気さ、それら全てが混ざり合い、当然と言った様には、街の一角でとある噂となっていったのだ。

隅でキャッキャと騒ぐ年若い女性にはじめ、その見目に嫉妬した男たちの、妙に鋭い視線を受ける。は、人の視線が嫌いだった。

自分が注目される時なんて、どうせろくな事じゃないと思っているからだ。

だからこうして、気付いたら人気の無い路を歩いていたりする。

そうしているうちに、建前であった「用事」のだいたいが済み、最後の店を出たは、丁度自分のすぐ目の前に三蔵たちが現れたことに、

うわっと少し驚いた。




「あれ、皆もここに用事?」

「そういう訳じゃないんだけどな。それにしても…マジで見つかったな」

「あはは。ですね。いやー、しかし僕らも驚きました。、貴方はこの街で何か仕出かしたんですか?」




困ったような笑顔をする、八戒の言葉を聞き、は自分の動向を振り返る。

本人は、自分が良い意味で注目されているなんて事には、全く気が付いていないのだ。

とりあえず、この場に於いてはお互いに幸を称した結果となったのだが、三蔵は、目立った行動は控えて欲しいと思っている。

とは言っても、目立つのはだけには限らないというものだ。




法衣を着た色白のタレ目金髪美人の三蔵。

やさしい笑顔に、綺麗な翠の瞳を蓄えた八戒。

大きな瞳と、無邪気な姿に思わず微笑んでしまいそうな悟空。

背が高く、綺麗なワインレッドに飾られた、切れ長の目をした悟浄。

それに加え、先程まで噂となっていた、赤目の白い美少年となると、どうしても周囲の目は惹いてしまうのだ。

これの大体が、歩き回っていたの宣伝効果が強く出た結果であったのだが、これを基に女性を集めようだなんて悟浄が目論んだのは、

言うまでもない…。














一行と+α()が合流してからは、宿探しに勤しんだ。

なんだかんだで、刻は夕暮。

人の出入りが多いこういった街では、宿も取りづらくなってしまうことが現状だ。

やっとの思いで辿り着いた、空き室のある宿。

ここでは、一人部屋が三つ、二人部屋が一つだけ用意された。

無論、皆、これ以上の野郎との関わりを絶ちたかった故、隅では部屋割りのためのあみだくじが開始される。

その結果は、以下の通りである。



一人部屋:三蔵、八戒、悟浄

二人部屋:、悟空




その後、とりあえず夕方まで各部屋で休む事となったが、八戒が買い出しに行くと言うので、が同行を名乗り出る。

ジープで寝腐ってしまった詫びの様であったが、八戒は何も言わずにそれを受け入れた。


人に慣れない事は愚か、嫌煙され続けてきたはとても不器用だ。

だから、自分一人でもいいからこの少年を受け入れ、大切にしたいと、八戒は自然とそう思っていた。

とは言っても、既に自分を含めた四人は彼を受け入れつつある。

人懐っこい性格なのは、果たしてなのか自分たちなのか、正直言ってわからない。


買出しの途中、荷物を抱えるを見て、八戒はふと気になっていた事を訊いてみる事とした。




は、何故白ばかり身に付けているんですか?」




先程のマスクの事も気になっていたが、聞き出しが困難だと思った八戒は、いくつか思い浮かぶ中でその質問を選んだ。




「……え?」




突然の問い掛けに目を丸くする

どうやら、驚くと「え?」と言ってしまう事が癖の様だ。八戒はそんな間の抜けた少年を見て、また少し笑う。




「先程がお店から出てきた時、買ったものをちょっと覗いてしまったんですよ。そしたら、何やら白いものがたくさん見えたもので」

「ああ、あれは、服と包帯を買ったんだよ」

「包帯……ですか?」




裾を捲ってみせたの腕には、掌までびっしりと包帯が巻かれていた。




「これ。剣を持った時、その重みで手が擦れる事があるんだ。ずっと欲しかったから丁度良かった」

「そう……ですか」




軽々と答えるに対し、話が逸れてしまった八戒は内心苦笑する。

しかしその一寸後、こちらから少し顔を逸らした少年が、ぽつりと言った。




「白に拘る理由はな」

「え……?」


「これは、オレの大事な人の色だからだ」




そう言った少年の瞳は揺れていた。何かを思い出すかの様に呟かれた言葉は、八戒を何故だか妙な気分にさせていた。





なんとなく、が女性のような、そんな気がしたのだ。






























飛び出てる管理人 : 出会い編は前回で果たしましたが、まだお互いを知らなきゃいけない章なのであります。
悟空          : なぁ
飛び出てる管理人 : はい?
悟空          : お前、何が飛び出してんだ……?
三蔵          : 脳みそだろ。こいつがそれ以外、何かに抜きん出る事は考えられん。
飛び出てる管理人 : えええ(゜д゜)まぁ……出てますけどね、でろでろと。ほらほらほら……!笑・怖っ
悟空         : きゃー!く、くんな!!
三蔵          : ……とりあえず死ね。
飛び出てる管理人 : えええええええええΣ((((゜д゜;;;;
三蔵          : 逃げても無駄だ。
飛び出てる管理人 : (Σつ、捕まった……!!!(滝汗))
八戒          : まあまあ。三蔵。それよりは月●仮●みたいな格好ですよねぇ……。
飛び出てる管理人 : そうです。でも、さんは月●仮●さんよかかっこいいんですよぉ。そりゃもう美少年ですからねっ
             (てか、三ちゃんそろそろ放しておくれよ・・・首がおれるYO!)(死)
三蔵          : 殺す。
悟浄          : 三蔵サンそんなにいじめると出番減っちゃうよ?
飛び出てる管理人 : そうだそうだ!減らすぞこのヤ…………すいませんっ!TT

悟浄         : いいから、お前は脳みそひっこめろ、気持ち悪ぃ……
              おっと、どこ行くんだ。続きはこっちだぜ=