盛大なる歓劇
音も無く、そこには血が飛び散った。
床に滴る真実だけがものを語る。
スキルハンターを右手に持ったクロロと、面を左手で押さえる。
素早さ共に互角で、しかも相手は攻撃をしてこないというのに、自分の口元からは落ちつづける液体があった。
――この争いが、面白くてしょうがないんだよ。――
「なるほど、だんだん君の事がわかってきた」
「そう?それじゃあ、まず何がわかったのかな?」
「仮面の下は俺同様、血で溢れているんじゃないか?」
「クック……正解。そうこなくっちゃ」
顎の赤を拭ったクロロの前で、は仮面を押さえていた方の手で、そっと其れを外した。
顔に密着していた側面には、口から出るもので溢れ、微かに床へぽつぽつと赤い滴が零れ落ちた。
そして、やっと露になった舞姫の素顔。
血を流す口元には笑みを含んでおり、整った顔の女はまるで、おぞましい生き物の様だった。
しかし、それにも増してクロロが驚いたことは、彼女の瞳であった。
「クルタ族か…」
「クルタ族?何それ」
手出し無用の勝負をしていた2人を見て、ヒソカはその少女の事実に、堪えきれず笑みをこぼした。
なんてこの場に相応しい形なのだろう。
――の緋かい瞳。
ただ合点が合わないのは、彼女がその「クルタ族」という言葉に反応しない事だった。
「自分の一族の事を知らないで生きてきたのか?」
「僕の一族……僕の?」
「あぁ。興奮すると君のように目を赤くする輩だ」
「クルタ…族……」
「姫、様子おかしいよぉ?????♪」
「リヤオ!ジャム!」
「うん!」
「は〜い、リヤオいくよ〜〜」
水を出したジャムに、先程と同じ様にリヤオが触れると、念を発し諸共姿を消した。
最後、一人残った、常にの傍にいたジェマンティグという男がクロロに頭を下げると、その姿もすぐに去っていった。
それを逃すまいと手を出そうとしたフェイタンを制し、残った血の痕を触ってみせたクロロはくすっと笑う。
「団長、逃がしていいのか?」
「あぁ、気にするな。また彼女たちには会えるさ。近いうちにな」
自分の素性も知らない挙句、あそこまで落ち着き払い、あれだけの者に信頼を受けている人間が感情を乱した事に、
クロロは大いに胸を高鳴らせた。
自己防衛の強い彼女の能力。
自分が攻撃した分だけ返り討ちに合う、あの念の力。
そして、緋の目。
これ以上にない、極上の素材だ。
「パク、あいつらの仲間に触れていたな。情報をくれ」
「わかったわ」
「あとコルトピ、お前もだ」
すぐに会える。
すぐに、探しあててみせる。
H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H
基地に戻った舞姫たちは、のただならぬ様子に驚いていた。
自分達もはじめて聴く、クルタ族という名前。
「姫、大丈夫ですか?」
「……ジェマ、クルタ族…だって」
「皆の中に、その名を知っている者は……調べますか?」
「いい、自分で行くよ。ありがとうジェマ、もう休んでいいよ」
「はい。それでは」
大きな屋敷に住んでいる舞姫。
と言っても、常に居る場所はその地下だった。
自分達を殺るためにやってくる愚かな人間達を追い詰めるには、絶好の場所だからだ。
何故上へと向かうのか。
バカの一つ覚えのように固定観念を持つやつらには、制裁を加えようと。
これもの趣味であった。
楽しみには、最高を尽くすこと。
すぐに蜘蛛はここをつきとめるだろう。
凝をして見ればすぐにわかる。
この面が、本来のものでない事くらい。
「クロロは次に、どんな事を教えてくれるんだろうね・・・・・・くくっ・・・くくくくくっ」
自分を揺るがした男の事を考えると、は楽しくてしょうがなかった。
手を出していないものの、隙のないあの動き。
念の大きさも、自分と同等。
出合った事のない、最高の閉幕カッター。
早くここに来てみなよ
そして君の話を、もっとたくさん聴かせてよ
やっとこさ第一章終了という事でっす!
次からは、新しいお話に入ります。
一応ですが、この長編では、クロロ・ヒソカ・フェイタンあたりの
ドリームにする予定です。
行き当たりばったりですみません;;
いろいろ書きたいことがありすぎて、どう集約していこうか考えつつ、
続けていく予定です。
ではでは、また次章でお会いしましょう^^
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