「で?私を殺すんデスカ??」

「うん。」

「依頼人は私の父の愛人の・・・・リマイロさんですよね?」

「うん。」

「そうですか。あの方も大変ですね。殺し屋を何人も依頼して、最後の手段にゾルディックときましたか(苦笑)」

「・・・・・・・もういい?」

「あぁ、すみません。でも、流石の私も貴方相手には勝てませんから。とてもつまらないやり方で申し訳ないのですが」

「何?」



恐縮した様子で、女が自分の背後から取り出したのは、ある女性の遺体だった。

血が付いている気配は無く、首が不自然な方向に曲がっている。



「依頼者がこれじゃあ、困りませんか?」

「うん。そうだね。」



ストレートで綺麗な黒髪の青年は、今まで殺そうとしていた女に背を向けると、そこから何事もなかったかの様に立ち去って行った。



たった3分間でしていたとは思えない会話。

それでもこれは、両者にとっては“いつも”の会話。

普段の会話。



人を殺せる、

人の会話。











dry












ゾルディック家

名の知れた殺し屋の一族。


そこに一人の女、もとい依頼人が来たのは、あの会話から数日後だった。

客室に通されなかった依頼人は、直ぐに用事が済ませられる場所に居た。



イルミの部屋だ。



「俺に何か用?」

「すみません。派手なあの女性がちょっと不得意でしたので、直接来てしまいました」



苦笑しながら言う女は、本当に詫びているのか、他人の母親を貶しているのか分からない言葉を吐いた。

実際、今の彼女の場合は、本当に悪いと思っての事なのであるが。



「で、何なの?」

「貴方に依頼しに来ました。勿論、殺しのです。」

「別に構わないけど。」

「ちゃんとそれなりの額はお支払いしますよ。」

「ターゲットは?」

「私の父、を。」

「父親なの?俺の部屋まで何事もなく来れるんだったら自分で殺ればいいんじゃない?」



顔は何の形も示さないが、イルミは自分の感情ひとつで動いているという事を今、女は理解した。

普通仕事というものは、最低条件以外は呑むのが常識だ。

けれどイルミの場合、客に何の躊躇も無く“自分で殺ればいい”と言うのだから、驚きだ。

しかし何故か、イルミが言うと妙に許せるようなところがある。

天然なのだろうか。



「そうですね。でも、貴方にやって頂きたいんです。私を殺せなかったリマイロさんと貴方への、ちょっとしたプレゼントと思って頂ければ。」

「へぇ。タチ悪いね」

「ありがとうございます。」


「じゃあ、書類書いて。」




依頼人 :

ターゲット :

依頼人とターゲットの関係 : 血離親子

決行日 : 近日。
      殺る時には私も付いて行きますので、ご連絡下さい。

連絡先 : 090−××××−0×××



「これ以外は書く必要がないと思ったので。割愛させてもらいますね。」










H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×




Pi lu lu lu lu lu ! Pi lu lu lu lu lu !


「はい。」

『イルミだけど』

「あ、今晩は。本当に連絡くれるとは思いませんでした。」

『一応仕事だから。直接見ててもらった方が信用あるし』

「ありがとうございます。今、父が居る場所、お分かりになりますか?」

『シティビルの後ろに隠れてる小さなアパートの四階、奥の部屋。』

「女の人と一緒ですか?」

『誰かと一緒なのは確か。いいから早く来てよ。向かいのビルにいるから。』




Pu - Pu - Pu - Pu ・・・・



携帯を切った後、直ぐには指定された場所へ向かった。

念使い手ということもあり、掛かった時間はものの数秒だ。

もっとも、早く着いたのはそれだけが理由という訳ではなかったが。



「おまたせして、すみません。」

「早かったね。行くよ」



それだけの言葉を交わした2人は、手前のビルへと飛び降り、たちまちアパート内へと入って行った。



窓から直に入ってもよかったのだが、アパートの窓は思っていたよりも小さく、事を大っぴらにしたくない2人は、階段を下っていた。



「本当に自分で殺らなくていいの?」

「何で、…ですか?」

「なんかさっきからオーラがすごいよ。少しは抑えなよ。」

「あははっ。そう…でしたか・・・・。」

「あと、その片言の敬語もイライラする」

「・・・・・・・・・。これまで抑えたら私、念が爆発しちゃいますよ、きっとね…(苦笑)」

「ふーん。意外と落ち着きないんだね」



ばこっ



という音と共に、激しく一室のドアが破壊された。



「なっ!なんなのあんたたちっ!!!」

黒いレースのネグリジェを着た女は、甲高い声を上げながら、イルミとに突け寄る。

ここの部屋の主だろうか。


それを横目でちらりと見たは、感情なく笑らった。




「ど、どうしたんだっ!!・・・・・・・・・・・・・!??」


「どうも、お父さん。お久し振りですね。リマイロ婦人のご様子は、お気に召されましたか?」


「お……お前っ!?」


「私を遣ってくれて、ドウモありがとうございます。」


「な、何を・・・・・・・っ!」


「リマイロ婦人が邪魔だったから私に消させたのでしょう?彼女は愚かで、とても可哀相な人です。あなたに仕組まれて、

私に殺されたんですから。」


バチっ


「お・・・・・まえ・・・・・・・・・・・」


「その手の内に遊ばれていた私も、馬鹿だとおもいます。」


パチッ パチッ


「その・・・・・隣にいる男は・・・・・・・まさか!!」


「私の手には掛けません。あなたの無様な死なんて、近くで見たくないしね。」


「っ、ーーーーーーーっ!!!!」


「イルミさん」



ぱきゅ ぽきゅ ごきっ



「い、いやぁぁーーーーーーっ!!だ、誰かぁぁーーーーー!!!!」


「うるさい人だ。そして、馬鹿で可哀相な。」



パチンッ















H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×



「これからどうするの?」


部屋を出てアパートの屋上に身を委ねたは、夜空を眺めていた視線を、ビルの闇へと移した。


「何故、ここにいるんですか?」

「とりあえず、振込先の口座渡しておく。ここに入金して」

「はい。後片付け、ありがとうございました。」

「うん。で、これからどうするの?」

「気に、掛けてくれてるんですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・」



沈黙の後、

は瞳を夜空へと戻した。



「夜空、綺麗です。」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「街の灯かりがちょっとだけ、邪魔ですね」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「幻影旅団」

「?」

「私、幻影旅団に入れますかねぇ?」

「知らない。でも君位の能力者なら、大丈夫なんじゃない」

「あそこは……流星街は、星が綺麗ですからね」

「それだけの理由で入るの?」

「いいえ。あそこにいれば、私の能力を抑えなくて済みそうですし。それに、イルミさんに、イライラするって言われちゃいましたから。」

「じゃあ・・・・・・・」



にそっと暗が重なった。

肩に触れた手は、服の薄い布をを通じて冷っとする。

そうして再度向けられた瞳には、先程の事があったせいか、未だに乾いていた。

イルミとの瞳の影は同じだった。

感情の現れない重く閉ざされた壁。



「イルミさん?」

「俺のところに来ればいい。」

「……え?」

「夜空なんか見上げた事ないから知らないけど、森っていうか、あの辺り山だし、綺麗なんじゃない?まぁ俺には何が綺麗なのか

判らないけど。それに…」

「……?」

「毎日その力を発動してくれるなら、他の奴らの訓練にもなると思う」

「……今日の私の事、気に掛けてくれているんですか?イルミさんのせいじゃないんですから、本当に気にしないで下さい。」





「!?……は、はいっ!!」

「君は金持ってないんでしょ?」

「……。」

「払ってもらわないと困るんだよね。親が煩いんだ。」

「……。」

「ないなら、稼ぐしか方法、ないんじゃない?」



イルミの強制的な言葉は、を心配して出ているものではなかった。

イルミが“感情で動いている”ということが解っているなら、理解に苦しむことではない。

だが、一番重要となる当の本人は、意外と気付いていないようだ。



のことを、“気に入ってしまった”という事に。














H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×H×



。どう?」

「いいところです。空気も澄んでて、流星街より、ずっと気持ちがいい。」



イルミとは今、ゾルディック家の庭(もとい、森)にいた。

深緑の中にいる2つの暗。



の念って、言葉に封じてあるんだよね?」

「はい。私の口調が丁寧で、怒りが帯びていない程、念は発動しません。」

「なんかそれって、微妙なんだけど」

「やっぱり、イライラしますか?」

「うん」

「あはは。ごめんなさい。」

「今度からこうしようか?その変な言葉遣ったら、罰を与えるっていうやつ」

「変な言葉って……敬語、ですか?しかも、なんで罰…」



バチッ!



「っ…今、ちょっと怒ったよね?」

「あ…はい。すみません・・・・。」

「いいね。結構、痛かった。は皆を鍛える為にも変な言葉遣うの、やめよう。」

「え…しかし……っ」

「ここにいる時と、俺の前では遣わない。できるよね。」



イルミがもつ変化のない瞳で覗かれ、は戸惑った。

どこかぐぅっと近付いてくるイルミの顔を見て、圧迫感を覚えたは、急いで言葉を紡ぐ。



「は、はい。わ、解りましたから……あ・・」

「はい、だめ。罰決定」

「あ、あの、今のをカウントするっていうのは、ちょっと酷いん………」







・・・・・・・


・・・・・・・






「イルミ……イルミさん…!?ぇ」


「罰はだんだん重くしていくから、覚悟しておいた方がいいよ。」


「え、あ、えええぇ……」




の肩にかかった黒くて艶のある長い髪が頬に触れた途端・・・・・


イルミからの優しく、冷たいキスがに落とされた。




戸惑うの頬に、イルミの手が宛がわれる。


そっと撫でられた瞬間、イルミにビリビリと電流が流れる。

それでも、真っ直ぐに触れてくるその冷たい手を




心地良いと感じ…



































終わり・・・・・・なのかなあああ・・・・;;;;

というか、あまーい!
珍しく甘いの書いたら、こしょばゆーい!!
続き書きたいけど、こしょばゆーい!!;;;;笑


初H×H短編です。
今までにクラピカの裏モノ(性的表現のない、ひたすらなダーク系)
を一つ書いていたんですけど、あれは下げました;
私自身が、精神的に厭になったので。笑

なんだか、私は甘いの書けないのでしょうか・・・・;
イルミラブラブ書きたいぃぃーーーー!!
しかし、書いたらこしょばゆーい!!

イルミは、顔に感情が出ない分、行動のひとつひとつにドキドキしませんか?
しません・・・か・・・・・?;;;;;
すみません・・・・・・・・!!!

個人的に、イルミは好きですぁ〜●^^●