も う 少 し 、 あ と 少 し
はハオの手で口を塞がれ、民宿「炎」の裏で身を潜めていた。
「ハ…‥ハオ‥・(逃げるの?)」
「違うよ、。これは逃げるんじゃなくて、“次に持ち越す”って言うんだ」
「それって‥…」
が何かを言い掛けると、それに重なる様に近くで葉の声がした。今はこんな形でハオのマントの中に収められて
いる体は、さっきから彼の腹の辺りと自分の腕とがくっつき、もどかしくってしょうがない。普段の自分だったらこん
な事は絶対にさせないのに……。と、唇を噛み締め、拳に力を入れた。
すぐそこでアンナがサンダル片手に現れた時は、驚きとひやひやする神経で、そんな事一瞬で忘れてしまったが。
そんなの状態を楽しむ様に、口を抑えていた手を更に引き寄せ、耳元に息がかかる位置でハオがクスクス笑う。
「(あんなもの持って…まるで僕たち、害虫扱いだね)」
アンナは「あいつ…いったい何処に隠れたのよ」と、ぼやきながら、まだ、ハオが居る物陰周辺をうろうろしている。
「(ねぇ、。今日は妙におとなしいんだね)」
ハオがまた、後ろから一言言い、の耳を唇で噛んだ次の瞬間。
ドゴーン!!
と地響きが起こる音がし、破壊された近くの木材が飛んだ。その中からは、何かを掴んだ様に右腕を挙げ血管を浮
かせたと、その時一緒に飛んで行ったハオの姿が露になった。これはもう、見つかる見つからないの程度ではな
く、傍に居たアンナは呆れ顔で、そのアンナをちらっとみたは、
「アンナさん。モノを壊してしまった代わりと言っては難ですが、このハオを差し上げます。」
尻餅をついて後ろ手をついたハオを蹴り上げ、は恐い程の笑顔で、ハオにサヨナラを告げた。
◇
◇
◇
そして、その一週間後だ。ハオが痣や得体の知れぬ傷をいくつもつくって戻ってきたのは(爆)。
「ん?もう帰ってきちゃったんですかね?」
彼女は事実上、ハオの女官として使わされているので、一応敬語は欠かさない。たどたどしい足取りの、明らかな
怪我人に向かい、見てみぬ振りのごとく、しかもちょっと戻ってきたのが迷惑そうに話しだす。
「……ちょっと手を…かしてくれないか……(困笑)」
このままでは、自分の居なかったこの一週間がどれだけ素晴らしい日々だったかを語られる、または、どんな暴言
を吐かれるやも知れぬと、先を感じ取ったハオは、とりあえず上手い方向に向かないものかと、に介護を申し出て
みる。そんな時のと言えば、ティータイム中の貴族のごとく、菓子や紅茶を楽しみ、珍しい横文字で書かれた本な
んかを嗜む。が、流石に横たわっている人間が目障り(爆)な為、横目でちらりとハオを確認すると、「はぁー」と溜め
息をつきながら、ハオの隣まで移動した。
そして、破れたマントの先っぽをちょんちょんと突くと、うつ伏せになってこちらを見ているハオの鼻を、力いっぱい
引っ張った。
「イテテテテテッ……(←弱ってる)」
「…ったく。あの時の事はもうこれくらいで許してあげますよ。じゃあ、手当てしましょっか。こんなハオさん見たら、
皆びっくりしますからね。」
「…悪いね」
はよいしょとハオの腕を自分の肩に回すと、応急処置(のようなもの)をする為、ハオを別の場所に移した。
◇
◇
◇
その“別の場所”とは、ハオが使っている“部屋”と言うものなのだが、これまた冷やりとした、殺風景な所なのだ。
オパチョだけでなく、他の人間が入る事は全くなく、入の許可が出ているのは女官のだけであった。それは、
彼の一人だけの時間や、何か思う事があるから用意されたもののため、他人の出入りは入念なのだ。。
「…ここに戻ってくるのは久し振りだね。」
「最低、一週間は入っていませんからね。」
「あぁ。……落ち着くよ」
先ほどとは違う、ほっとした様な顔で笑うハオ。そんな横顔は、見てしまうだけ時間の無駄だと思っている(爆)は、
救急箱“らしからぬ”(すずめさんは親切なお爺さんに言いました。「ここに大きな玉手箱と小さな玉手箱があります。
お世話になったお礼です。お好きな方をお持ち下さい。」)の、“大きな玉手箱”くらい大きいセットを持ち出し、上半
身を突っ込んだ後、何かを取り出した。
「んー。この注射は……」
「あ、あのさ…」
「針はこうかな?そして、この量で人間を眠らすには……って、相手はハオだからなぁ…」
「…さっきから何、ぶつぶつ言ってるんだい……?(汗」
筒抜けのの陰謀が気になりまくるハオ。(気にするなと言う方がムリだ)そして、主人に問われた事はちゃんと答
える主義の女官、さんは、愛くるしいかつ目まぐるしい程の心情から生まれる(最高の)笑顔を彼に返すのだ。正
に、「私の為に死んでくれ(爆爆)」と言わんばかりに……。
「…………?」
「くすくす…冗談ですよ、冗談。さぁ。ちゃんと手当てしないとです」
いや、絶対本気が混じっていた。
とにかく、こんな事ばかりやっていては埒が明かなし、ハオと居る時間がなんだかんだ増えてしまう(←こっちが本
命)ので、はまた“大きな玉手箱”に頭を突っ込むと、今度はちゃんとした傷薬やら包帯やらを取り出した。
「痛いとかは言わないで下さいね。女官って言っても、人の身の回りは得意でなくて…」
「解っているよ」
「……その言い方、気に障りますねぇ…」
にっこり笑うハオに鉄拳を寸でで止めた(爆)のは、その言葉がいかに自分を把握し、受け入れてくれている証拠
であったことに気付いたからだ。とて、最初っからこんな気質だった為、誰かに従伏するとか、世話をするとかは
は苦手だった。それなのに、自分を少しずつ紐解いてくれて、絶対的な力があると小参したりして。言う順番は逆な
のかもしれないが、そう交互に思う度、なんとなく“女官って事でもいいかな”なんて、も思い出したのだ。
今もこうして、本当は逆らってはならない人間にこういう対応ができる、そんな寛大さが彼には備わっているんだから。
「それにしても、派手にやられてしまいましたね…」
「心配してくれるのかい?」
「あの……」
「“アンナを尊敬した”そう言いたいんだろう?の言いたい事は解るさ。本当の心内もねv」
「じゃあ訊かないで下さい…。」
こういう時、ハオは「可愛いなぁ」なんて思う。は他の人間と違って、いい。はっきりものを言われて傷つくことも…
まぁそれはしょっちゅうだけど、頑張り過ぎてしまうところや、その精神がなんとなく……。それが誰かとすごく似て
いて、脳をかき乱される事もあるが、それが逆に、(この性格ともなると)傍に置いておかないと不安になる時や、無
性に居ても経ってもいられなくなる時がある。最初は、遊び半分だったけど。
「じゃあ次は背中です」と、くるんと体を向こうに向かせられ、冷たい手で突かれる(?)。消毒なんて大して痛いもの
ではないけれど、「イテテテ……」なんて言うのは、本当はもっと他の場所に傷がある証拠。実は、が一番知ってる
んだ。
「ねぇ、」
「はい」
「手、冷たいね」
その瞬間には、ハオはこちらに向き直り、をきつく抱きしめていた。治療中だった両手はハオの胸板にぴったり張
り付き、そのまま剥がれそうだったけど、剥がれなかった。
「ハオ……?;;(離せコラ)」
「ダーメ。の手が温かくなるまで、離さないよ」
「手当てしていれば、そのうち温まるよ」
「僕はこっちの方がいいんだけどな」
「私は、厭だ」
「僕はいい」
「我侭」
「お互い様だね」
ハオの口元がの耳に近づく。以前のように近い位置で笑われ、ちゅっと音がした。
「なっ・・・・!またっ!!」
「は結局、僕から逃げる気はないんでしょう?」
「この状況からは非常に脱したいですが…;」
「今の状況じゃなくて、この一週間のことだよ。は、ここにずっと居てくれたじゃない」
ちょっとしたものだけど、大きなところを射抜かれ、は芯から熱くなるのを感じた。この人は何を言っているのだろ
う。自分に必要以上な事をしてくるハオから離れたかった。けど、実際ここに戻ってきたのは真実で、でも、それは
行く所がなかったワケで……。もう、言い訳は思いつかなかった。
「ありがとう、」
緩められた腕の調子に、不覚にもその笑顔を直に見てしまう。優しい笑顔だ。その間に隙を作ってしまった事もそう
なのだが、そのまま目を閉じてハオの顔が…唇は近づいてきた。
◇
◇
◇
「ぐふっ………」
「つ、次やったら、こんなもんじゃ済まさないからな……!」
流れは掴んだ、ムードはばっちり!…‥だったのだが。上手い事ちゅうをしようとしたハオの、その寸ででは我に
返り、一週間前よろしくで、ハオをぐぅで吹っ飛ばしたのだ。よくよく考えてみれば、危なかったじゃないか。相手は怪
我人と言えど、“上半身裸の『ハオ』”なのだから。
「素直じゃないんだから‥…(←死にそう」
その日はもう、ハオの声が聴こえる事はなかった(爆っ)が、彼の部屋は何故か、静か過ぎる事はなかった。
それは、やっぱりハオのことが心配だったが、彼の隣でずっと看病をしていたから。
「もう少し、あと少し」って言う歌がZARDのむか〜しの曲でありますね。
Σ(゜■゜)!!!歳がバレる
44444HITを取って下さった、佐倉淳美様にお届けします。
おそーくなってスイマセン……。なんだか、いろいろ申し訳無い事があったので、普段より長く、
通常よりバカっぽく、ちょっと温かく(?)お送りいたしました。あ、恒例の土下座、見たいですか?
いやー、もう土下座のし過ぎでデコが磨り減ってますよ、ゴメンナサイ!!!!!!
なんだか、言い訳すると胡散臭いので、しません(−ー;
では…・・管理人@kaedeでした…(←ヘコみ)